現像を待つ潜像 ― RAWという素材

なぜ、フィルムを銀塩というのか。それは、ハロゲン化銀が感光することで黒化銀になる。それを化学処理する。デジタルの場合は、センサーが受けた光を電位に変え、電気信号を演算する。フィルムとデジタルの違いは、化学処理と電気的処理の違いである。

レンズが焦点を結び、基本的には、カバーガラス、IRカットフィルター、ローパスフィルター、マイクロレンズ、マトリックスフィルターを通り、フォトダイオード(受光素子)で変換される。ここで面白いのは、赤外線をカットしていること。可視光線は、およそ380nm(ナノメートル)から780nm。人間の目はこれだけあればいいが、フィルムでは色素を加え、デジタルではカットする。扱い方が全く真逆である。

RAW画像だが、マトリックスフィルターで波長を分光し色を推定している。センサーは照度しか感知していない。あくまでも単色。では、どのようにしてカラー画像になっているのか。それが各社のカラーマネージメント、自慢の画像処理エンジンである。つまり、色を演算した記録を持つ画像。ホワイトバランスにしろ、ブラックレベル補正、トーンカーブはリニアな特性のままだ。このように、レンズ補正情報、カラープロファイルが埋め込まれたのがRAW画像である。

よく、「RAW=生」といわれるが、埋め込まれた情報をカメラ内部や現像ソフトで、復元しているのである。ということは、メーカーが違えば、仮にセンサーが同じであっても違うRAW画像になる。更に、現像ソフトの演算によって違う画質になるのも理解出来るだろう。

RAW画像が万能のように語られるが処理を前提としている。調整幅が残されているのだ。決して万能とはいえない。必ずしも現像作業をする必要はないが、RAW画像は、「サチらせない(白飛びさせない)」ように、12〜14bitの広いダイナミックレンジのまま、トーンカーブを適用させていない。これはRGB各色にもいえる。明るさも色も、自分で決める必要がある。対して、JPGは8ビット256階調すべてを使うよう生成される。画像としての特性が違うのだ。また、JPGが非可逆(ひかぎゃく)圧縮により情報を捨てているので、後からの処理に不向きになる。したがって、JPG撮って出しが悪いという訳ではなく、作者の考え方しだいだ。

正確にいえば、RAW画像は調整を必要とするから「RAW=生」と表現している。純粋という意味ではない。仕上げが可能な素材ではあるが、撮影の失敗を救済することが出来る訳ではない。白飛びや暗部のつぶれを防ぐ安全マージンはあるが、ピントや構図の失敗はカバーできない。これは、いわば加工を前提とした素材である。例えるなら、アジの干物と同じだ。生ではないが、塩水に着けて干してある。必ず焼かなければならない。RAW画像とはそういうものだ。何故か、写真は紙に「焼く」という。

コメント