単焦点レンズを“単レンズ”と呼ぶ違和感 ~なぜ写真レンズは1枚で成立しないのか~

写真レンズは大きく2つ、単焦点レンズとズームレンズ。この時、単焦点レンズを“単レンズ”と言う人がいるが厳密に言えば誤りである。話の流れでは理解できるが、光学的に見ると正確ではない。そして、具体的にはレンズを語る時に、「単レンズの方が良い」、「単玉の方が高画質」などといわれる。果たしてこれは本当だろうか。

写真レンズは数枚の“単レンズ”で構成されている。単レンズとは、一枚の光学素子(単一レンズ)を指す。焦点を結ぶのであれば、凸レンズ一枚あれば良いようだが、写真レンズとして十分な性能を満たすことができない。同様に“単玉”も一枚のレンズと言う意味である。

写真レンズは、十分な画像を得ようとすると一枚では不十分である。太陽光をプリズムに通すと7色のスペクトルに分かれる。これは波長(色)によって屈折率が違う(分散)ことで知られている。屈折率の異なる波長は同じ点に収束しないので、そのズレを収差と言う。有名なところでは「ザイデルの5収差」だ。これらの収差を補正するために数枚のレンズが必要になる。だからと言って、レンズ枚数が多い方が良いとはならない。

つまり、単レンズ(一枚のレンズ)は基本的には成立しない。「メガネは一枚なのにちゃんと見えるじゃないか」と言う人には会ったことがないが、一応の理屈はメガネのレンズを通った光が眼球の水晶体を通り網膜に結像しているので2枚系と考えられる。

レンズ構成図を見たことがあるだろうか。例を示す。

画像出典:Eastwind41, Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0

レンズ構成(レンズシステムともいう)は4群6枚。貼り合わせのレンズを使用していることに着目する。4つのグループに分かれているが張り合わせているレンズを使っているので6枚。

入射する光がフィルムや撮像素子の一点に集まれば良いが、収差があるためズレが生じる。その収差を補正するために凹レンズと凸レンズを張り合わせることが考案された。また、レンズの表面に反射する光もあり内面反射を発生させる。それはフレアやゴーストと言われ、不要な光や解像度を低下させる。そこでレンズを張り合わせれば反射する面を少なくすることが出来ると考えられた。しかし、レンズコーティングの進歩によって最近では少なくなっている。レンズの発展はコーティングだけではなく、非球面レンズの実用化やコンピューターにより光線追跡が容易になったことが寄与している。レンズ構成図ついでに言うと全体を凸レンズと見なすことができる。

「ならば単レンズやんけッ ウヘヘヘヘ」
「スミマセン、間違っておりました。と言うことはズームレンズもそうですね」
「せやろ、あやまらんかい」
「そうなると全部“単レンズ”ですね」

写真レンズは一枚では成立せず、複数のレンズによって収差を補正している。「単レンズ」という言葉が使われるとき、そこには明確な意味がない。何も言葉遊びをしているわけではない。レンズへの理解を妨げるといっているのだ。直接、写真が上手くなるわけではない。しかし、レンズの捉え方は確実に変わる。

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